臓器別治療法


<こんながん専門病院、がん専門医にご用心
 〜安心できないがん拠点病院の実態〜>


 2005年度中にこのサイトに寄せられた相談の中で、以下の2つに限定していくつかの症例をご紹介します。

1.あくまで健康保険内での治療
(未承認薬、保険適応外薬の使用は施設により限定されるためです。)
2.がん拠点病院、大学病院での診療
(これらの病院は地域でのがん治療の模範となるべき病院のはずだからです。現在、がん治療の是正格差のためにがん拠点病院の整備が行われています。)

症例1:非小細胞性肺がん(stage2、手術により摘出、転移なし)
    50歳代女性

 手術後再発予防のため術後化学療法希望するが、主治医はUFTの内服を提示。本人は2004年、2005年のASCOの成績よりCDDP+VNR4コースを希望。主治医の回答は「そんな治療法は聞いた事がない。術後の再発予防で当院で可能な治療はUFTのみ。」更に2箇所の病院をセカンドオピニオンで廻るが、CDDP+VNRを術後に行う病院見つからず。

→この主治医は2003年ASCO IALT試験、2004年ASCO CALGB9633試験、2005年ASCO ANITA試験の結果を知らないのでしょうか?術後のUFTが推奨されるのはせいぜいIB期ぐらいのはずです。

症例2:非小細胞性肺がん(脳転移、意識レベル低下、嚥下困難、
    腺がん、喫煙歴なし)70歳代女性

 CBDCA+PTXを施行するが奏功せず、脳転移悪化し意識レベル低下。主治医より緩和ケアを強く推奨されるが、患者家族は当初より希望していたイレッサの投与を希望。しかし既に嚥下困難のため経鼻胃管(又は胃婁)からの投与方法のみ。主治医は「イレッサを胃管から直接入れる方法などありえない。効果が出るとは思えない。」と言い、イレッサの投与を拒否。

→イレッサを直接胃管から入れても奏功性は別に変わりません。私も施行したことありますが・・・。
 そういえば2005年ASCO 教育プログラム(Clinical Problem in Oncology)での症例でもイレッサを胃管から投与してわずか1週間で食事が取れるようになった例がありましたが、会場からはイレッサの胃管からの投与について思いきったことをするという意見やブーイングは出ず、ごく普通の投与方法と受け止められていたようです。もっとも新薬が藁に見えたり、全身状態が悪い患者さんにはすぐ緩和ケアしかないと言い張る腫瘍内科医では理解できないかもしれません。
 ちなみにこの患者さんはイレッサを他の医師から取り寄せ、直ぐに投与し、4日目に食事が取れるようになりました。1年経過した今も普通に自宅で生活をしています。

症例3:乳がん(術後再発、Her2陽性、ホルモンレセプター陰性)
    50歳代女性

 術後再発後ハーセプチン+タキソール、ハーセプチン+タキソテール施行したが奏功せず。主治医よりハーセプチンはもう効かないので臨床試験に参加するか緩和ケアに移行するよう指示あり。患者は最近認可されたナベルビンを使用したハーセプチン+ナベルビン併用療法を希望。しかし主治医は「ハーセプチンはタキサン系としか併用できない。ハーセプチンは既に投与して効果ないからこれ以上の投与は意味がない。」と治療を拒否。

→そもそもハーセプチンがナベルビンと併用できないと発言すること自体、医師として失格です。日本でのハーセプチン+ナベルビン併用療法のsecond-line以降のデータでは奏効率28%、TTP4.1月(腫瘍制御率は41%)と言う成績があります。また2004年ASCO抄録680によればFISH法+では、ハーセプチンを使用することで腫瘍が縮小するなどの臨床効果が得られなくても有意にTTPの延長が見られ、臨床的利益が得られるとされています。つまり腫瘍が縮小しなくてもハーセプチンの投与は行うべきなのです。
 ちなみにこの主治医はさまざまなマスコミに登場し、乳がんの名医?とされています。(患者さんが論文を持参したところ、逆ギレしたという話を聞きましたが・・・。)

症例4:乳がん(術後、ローリスク群、ホルモン陽性、閉経後) 
    50歳代女性

 術後に再発予防としてタモキシフェンのみ処方され、様々な雑誌をみた患者がアロマターゼ阻害剤への変更を希望するも、主治医は「アロマターゼ阻害剤は様々な副作用(例えば骨粗しょう症など)の問題があり、当院ではあなたには投与しないことにしている。」と回答。しかし患者は骨粗しょう症ならSERM(エビスタ)があるのでエビスタと併用したいと希望。すると主治医は「現在、アロマターゼ阻害剤とタモキシフェンについて閉経後乳がん患者で日本人における差を比較するための臨床試験を行っている。アロマターゼ阻害剤の副作用もデータとして重要なのでアロマターゼ阻害剤服用群もエビスタの予防投与を禁止しており、あなたも従って欲しい。それがいやなら転院してください。」と発言。

→もう何をかいわんやですね。コメントする気力もありませんが、某乳がん患者の会が絶賛している有名病院での出来事だと聞きました。

症例5:大腸がん(Stage3、術後)60歳代女性
 無事手術終了し術後化学療法施行することとなる。主治医よりUFT/ユーゼルを処方されるが、本人は5−FU/LVを希望。5−FU/LVも治療成績は劣っていない、UFTが米国で未承認薬で不安があるという理由。しかし主治医は5ーFU/LVは再発しないと使えないと説明。セカンドオピニオンで3ヵ所の病院廻るが同じ回答。患者はそれでもおかしいと感じ、文献を調べ主治医に提示。主治医の回答は「手術した大腸がん患者一人ひとりに再発予防のため5ーFU/LVをしていたらこの病院はパンクする。手術もたくさんこなさないといけないわけだし。あなた一人のわがままを聞く訳にはいかない。日本の医療は平等なんだから。」という主旨の発言。

→これもコメントする気力が起きませんが、この病院は大腸がんの手術数も多く、最近発売のある週刊誌の特別号では「いい病院」と評価されています。

症例6:大腸がん(Stage4、肝転移、腹膜播種)40歳代男性
 術前で取りきれないと評価されていたが開腹術施行。原発巣のみ切除。化学療法として、1.UFT/ユーゼル、2.TS-1、3.L-OXP+UFT+ユーゼルの3つを選択肢として主治医が提示。患者はFOLFOX(主治医の病院で)+アバスチン(別の病院で)を希望。少なくともFOLFOXだけでも施行してくれないかと希望したが、主治医は「L-OXPを投与したいなら3のみ。FOLFOXは当院では定員があり、現在一杯であなたにはできない。他の病院も満杯で同じ状況だろう。」と発言。

→実はこうした訴えが最近多くなりました。しかし現在L-OXPの投与はFOLFOXしか保険上は認められてません。L-OXP+UFT+ユーゼルは(L-OXP+TS-1も同様)大規模臨床試験の成績が国際的に認められておらず、確定していない治療法です。どうしても内服にこだわりたいならせめてL-OXP+カペシタビン(これは臨床試験での結果が認められています)を提案するべきでしょう。
 なぜ日本の専門医達はUFT+ユーゼル、TS-1にこだわるのか?答えは明確ですが、ここではあえて書かないことにします。それから保険上のFOLFOXが定員だから臨床試験にどうぞというのもおかしな話です。日本のがん患者さんもバカではありませんから、こうしたおかしな臨床試験には人が集まらないようです。それと定員外なら最初から手術しなければよいのではありませんか?手術数稼ぎと臨床試験に参加させたい魂胆がミエミエと言ったら言い過ぎでしょうか?

症例7:膵臓がん手術不能(Stage4)60歳代女性
 膵臓がんの化学療法にGEM+CPA+UFTの3剤併用療法を主治医より言われ施行。しかし情報を集めるうちにこの治療法は他の病院では行っておらず、標準的治療法でないことが判る。そこで主治医に聞いた所「この治療法は臨床試験で行っているもので、あえて説明しなかったのはUFT、CPA共に膵臓がんに保険認可されている薬だから。」との回答。

→保険認可されていたら何を使用しても良い訳ではないでしょう。そもそもCPA,UFT共に膵臓がんに認可されたとは信じられない薬です。(今と異なり、当時の薬の承認がいかにいい加減な審査で行われ、製薬会社と結びついた一部の医師が利益を得るために暗躍したかが伺い知れます。)認可されている薬、未承認薬の使用を問わず大事なことはエビデンスを重視した治療を行うことです。

症例8:膵臓がん(stage2、術後) 50歳代男性
 膵臓がん術後にUFT使用。1年間使用したところで患者が膵臓がん術後の予防投与にUFTを使用するのは何のエビデンスもないことに気がつき、GEMへの変更を主治医に要望。主治医は「再発しやすい膵臓がんが今まで再発しなかったのはUFTの御蔭ではないのか。最近はエビデンス、エビデンスとまことしやかに言われるが効果があるならそれがエビデンスだろう。エビデンスというのは要は確率なんだから。」という主旨の発言をし、GEMに変えることを認めず。

→あきれはてるしかない主治医の発言ですが、それならエビデンスもない健康食品のおかげで再発しないという業者の宣伝も否定できないということでよろしいのでしょうか?

症例9:胃がん(術後再発、肝転移)50歳代女性
 first-lineとしてCDDP+TS-1使用。当初奏功していたが8ヵ月後あたりより徐々に耐性化したため、second-lineとしてタキソールを主治医が提案。しかしアルコール過敏性のため(お酒が殆ど飲めない、アルコール綿の使用も皮膚が赤くなり使用していない)患者がタキソールではなくタキソールのDDS製剤(アブラキサン)か、せめてタキソテールに変更してほしいと主治医に希望。しかし主治医は「タキソールにアルコールが含まれているとは聞いた事がないので、酒に弱い患者でも大丈夫。アレルギー反応を抑えるため投与前にデカドロン注射するから心配ない。」と回答。タキソール1回目の投与途中でアナフィラキシーshockとなり2回目以降中止。主治医からは「あなたは特異体質だから何の薬を投与してもリスクが高い。今後はこれ以上治療しないほうが幸せだろう。」と発言。

→タキソールにはエタノールがビール1本分以上含まれていることを知らずに投与している医師がいるとは驚きました。(ちなみにタキソテールはビール20mlに相当。)つくづく恐ろしい医師がいるものだと思いますが、この患者さんは別の病院で無事タキソテールが奏功し(それでも事前にデカドロンの注射は不可欠です)健在です。
 タキソール投与の前に「あなたはアルコールに弱いですか?」と患者に聞かない医師の元からは直ぐに逃げ出しましょう。無知な医師に抗がん剤は**に刃物と言い換えてもよさそうです。

症例10:胃がん(術後、Stage3)70歳代男性
 胃がんの術後補助化学療法にTS-1の服用を勧められる。患者に対し「投与期間は当初は主治医がいいというまで」と話すが(主治医は後にこの発言を否定)、家族同席の場では「TS-1の服用期間は2年間、これによりかなり再発率が下がる。」と説明。主治医はその後さらに「この投与は臨床試験であり、TS-1の投与で再発率が下がるかどうか調べるのが目的。」と言い換える。

→患者本人の理解力の乏しさに付け込んだといわれても仕方がない症例です。大腸がんと異なり現在、胃がんでは術後再発予防の補助化学療法の有効性は確立していません。補助化学療法としてTS-1の投与自体を完全否定はしませんが、少なくとも確立していない治療法を行うときは充分な説明が必要でしょう。



 代表的ながん5種類の中から2例ずつ、冒頭の条件にあてはまる相談例を記してみました。日本のがん治療の拠点病院ですらこうしたいい加減な治療例がある事に私はあらためておそろしさを感じます。勿論こうした症例ばかりではなく、大多数はきちんとエビデンスに基づくがん治療をしていると信じたいです。
 しかし、上記の症例はまだ氷山の一角であることも同時に伝えなくてはなりません。なぜならここにあげた例は、患者自身が知識も勇気も十分にあり、自らいい加減な治療に気付き、声を大きくして間違いを主治医に指摘した場合のみですから。今回はがん拠点病院の例で、かつ日本国内で認可されている治療法だけに絞りましたが、この他にもたくさんの例があるのです。
 そしてさらに残念なのは、こうしたいい加減な治療に手を染めていない優れたがん専門医の中でさえ、エビデンスに乏しい治療を行う医師を批判することができず、未承認薬であろうと優れたエビデンスを持つ治療法を自己責任で行おうという勇気ある患者に対して「どうせ助からないから、新薬は藁かもしれない。緩和ケアは見捨てた医療ではない。」などの発言で絶望に追い落とす医師がいることです。
 医師ならば、例え学会の重鎮が行ったことでも、日頃世話になっている製薬会社の薬であっても、エビデンスに反する治療法は批判すべきだと考えます。少なくともこのサイトでは様々な圧力や思惑、誘導に左右されることなく、正しいものは正しい、間違いは間違いだと言い続けなければならないと考えています。
 もちろん日本のがん治療を変えようとしている優れた方達は医師、患者さんを含めたくさんいます。そうした方々にも是非この文章を読んで頂きたいと思います。

2006年2月23日


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