印象に残ったカルテ


<症例4:浜松オンコロジーセンター所長渡辺享先生が
 昔診療された乳がん患者>


 浜松オンコロジーセンター所長渡辺享先生は、かつて国立がんセンターに勤務され、 日本を代表する腫瘍内科医もしくは乳がん専門医として、現在浜松と東京でご活躍の先生です。
 その先生が昔診療された乳がん患者で、未承認薬を使わずに完全寛解した例が心に残りましたので報告します。

<診療情報提供書>

・傷病名: 乳癌(59歳 女性)

・紹介目的:がんフォローアップ依頼

・経過概要:
 このたび当院通院中の○○様が貴院への転院を希望されましたのでご紹介申しあげます。経過は以下のとおりです。

・診断:乳癌再発、骨転移、左鎖骨上リンパ節転移、肺転移

・経過:
1997/11/14 左乳癌(T2N1M0, Stage IIB)に対し両胸筋温存乳房切除術施行。
      patho: invasive ductal cacinoma, t=2.3cm, n 3/17
 同年12月4日より術後補助療法としてJCOG9404プロトコルに参加し、UFT+tamoxifen内服。

1998/12/07 多発肺転移にて再発。
1998/1月よりdocetaxel6サイクル施行。最大効果CR
1999/12月 左鎖骨上リンパ節転移出現しPD。AC(40/500)療法6サイクル施行。最大効果CR

2001/03月 左鎖骨上リンパ節の再増大を認め、anastrozole内服開始。
2002/04月 左鎖骨上リンパ節の増大のためPDと判定。tratuzumab単独療法開始。最大効果PR

2002/07月 左鎖骨上リンパ節PDとなり、tratuzumabにweekly paclitaxel(80)を12回上乗せして行った。 CRとなり、2004/09月までtratuzumab単独で継続。

2004/09月 右坐骨神経痛あり。右腸骨転移の診断でPDと判断し、tratuzumab/docetaxel(60)療法 5コース施行。浮腫のため中止。その後骨転移に対しAMG162(治験)を投与し経過観察していたが、 2006年02月のCTにて多発肺転移の増大を認めPDとなった。

2006/03/20よりtratuzumab/vinorelbine開始し2007年01月まで継続しておりましたが、2007年01月16日 のCTにて肝転移出現しPD。01月05日よりxeloda内服開始しております(3月下旬−4月上旬効果判定予定)が、

このたび貴院での治療継続を希望されました。
 xeloda開始にあたり、再発癌であり治癒は期待できないこと、化学療法抵抗性となってきているため、 今後は緩和ケアの比重が高くなっていくことが予想されることをお話してあります。ご多忙中大変申し訳ございませんが、 ご高診のほどどうぞよろしくお願い申しあげます。
 


 2007年1月転院後、前医でハーセプチン+ナベルビンを3週おきに投与されていたので、 保険上認められているハーセプチンを毎週投与に変更し、骨転移対策にゾメタの投与を併用した。

(腫瘍マーカー)
CEA:15.5→2.6
CA15−3:323→28.9
BCA225:330→57  と全て陰性化

(CT)
 肺転移、鎖骨上リンパ節転移全て消失
 以上より治療開始半年で未承認薬を使用せず、完全寛解を達成した。
 やはりHer2陽性乳がん例にハーセプチンは、保険上認められているように毎週投与(又は3週投与1週休薬)が、 手間はかかりますが奏効しやすいと考えられます。
 前医では3週間に一度の投与でしたが、耐性化したように見えてもこのように完全寛解する 例がありえます。

(今後の課題)
1.脳転移予防のためにLapatinibを使用するか、脳転移が見られてから
  使用すべきか?
2.再発が生じた場合、DDS製剤を使用すべきか、Lapatinibを併用すべきか?
3.未だ使用していない承認薬ホルモン剤フェマーラをどのタイミングを使用するか?
4.骨転移用のゾメタをいつまで継続するか?

 今後の課題はまだまだありますが前医の国立がんセンターで完治を望めないとされた例が、 まずは治療半年で完全寛解になった事を素直に喜びたいと思います。

2007年7月8日


>>印象に残ったカルテTopへ



Since 2004 Copyright (C) Takaki Imamura, All rights reserved.