緊急レポート


<副作用のない、少ないがん治療は本当に正しいのか?(総論)>


 最近、副作用がない、少ない治療法が巷で様々に取り沙汰され、本になったりしています。 しかしその方法は本当に正しいのでしょうか。今回はそうした疑問にお答えしたいと思います。

 現在上記のようなふれこみで治療を受けている、あるいは受けようとしている方も、まずはこのサイトに 書かれている文章をよく読み、理解して下さい。
 どんな医師であろうとここに書かれている事実を否定することはできないはずで、否定する医師がもしいたら それはまともな治療ができる医師ではないと思います。
 もしこうしたコンセプトで治療する医師がいたら、この文章をどうぞお見せになってみて下さい。


■副作用が少ない、ないがん治療を目指すことは正しい
 まずこの姿勢を否定する医師はいないでしょう。文句なくこの姿勢は正しいです。 ではどうすればこのコンセプトが達成できるでしょうか?そこでいくつか方法が分かれます。


A.抗がん剤そのものを使用せず、健康食品や免疫療法、代替療法等に取り組む場合
(この方法については特にコメントしません。確かに副作用は少ない、又はない方法でしょうが、 「治療法」とは書いてありませんので注意が必要です。)

B.抗がん剤を使用する場合
(ここも幾つかのケースに分かれます。)



1)少量投与、極少量投与、少量休眠療法、漸増投与など
 こうした投与方法は決して間違いではありませんし、むしろ良い方法だと思いますが、問題は これらの治療法を提唱している医師の殆どが、自分の勉強不足のためにこうした治療法のみに固執し、 それ以上の進歩が見られないことです。
 その中には大変高名な医師、最近本を書かれた医師などもおります。

 こうした医師の特徴の1つに自分自身の豊富な臨床経験をベースにしていること、経験主義のため、 全体としてのデータが出せないことがあります。
 但し、繰り返しますが良い方法の1つです。
(※1つに過ぎないことに注意が必要です。)


2)同じ製剤だが副作用が少ない薬を使う。
 DDS製剤が代表です。アドリアマイシン→ドキシル、タキソール→アブラキサンなどがあります。 全ての薬にDDS製剤があるわけではないことが欠点でしょう。


3)抗がん剤の全身投与ではなく血管内治療法や動脈投与など局所投与を行う。
 この方法もケースを選べば間違いではありません。
 この治療法の評価では肯定的意見と「乳がんガイドライン」にあるような否定的意見に分かれますが、 どちらも絶対ではありません。

 局所制御のみを目的にした動注は正しいでしょう。
 例えば、乳がん多発性肝転移の患者で全国どこの病院でも手術不可能、完治も不可能の診断を受けた方が、肝臓への動注で 手術可能となり、術後は再発予防のため全身投与を行ってCR維持しているような例はどう評価するのか?
 「乳がんガイドライン」を作成した医師にも聞いてみたいところです。  問題は適応もない例も全て血管内治療法と称して行う医師の存在であり、適応さえ選べばこれも良い治療法の1つです。


4)投与前に奏効するかどうか抗がん剤感受性試験を行う。
 これも良い方法ですが、試験の評価が必ずしも絶対ではありません。 2剤以上使用すれば相乗効果が見られる場合もあれば、投与量の問題で奏効性も変わります。
 しかし闇雲に抗がん剤治療を行うよりはずっと、確実性があります。
 試験の結果、奏効性が高いと判定された抗がん剤ならば、副作用が少ないように少量から投与する方法も検討できます。


5)副作用を軽減する薬を併用する。
 代表的なものに遅延性吐き気止めのemend、抗がん剤投与後の体のだるさ、発熱、食欲不振軽減にエンブレル、 抗ホルモン剤の副作用防止にSSRIなど、日本での承認、未承認問わず、こうした薬はいくつかあります。
 しかしこれも殆どの方が知らないでしょう。

 ある大手新聞の女性記者の1人が、乳がんの手術後抗ホルモン剤の副作用に苦しんでいるという記事がありました。
 しかしこの記者は「がん患者の代表」のような立場で様々な発言をしており、多くのがん専門医が知己にも関わらず、 こうした薬の存在さえ知らないようです。

 このような人は一般の人々に比べ、良いがん治療法やがん専門医情報などが入手しやすいと考えられるかもしれませんが、 案ずることはありません。 今は無名のがん患者さんでも多くのがん情報をネットなどで入手でき、自己判断さえあれば、有名人、著名人よりも 優れた治療を受けられる時代となりました。

 TVなどで多くの有名人、著名人が、がんで通り一編の治療のみ受けて亡くなっていくニュースを見ながら、 このサイトを通じて知り合った無名の方々が、優れた治療法で生き延びている事に、改めて患者自身が勉強し、 自己判断することの重要さを感じます。
(※私は前述の女性記者の活動には大変敬意を表しています。念のため)


6)副作用が出るかどうか投与前に検査する。
 現在代表的な方法は、言うまでもなくCPT-11のケースです。
 ある高名な医師は著書の中で、少量漸増投与の代表薬としています。 勿論これはこれで正しいのですが、あらかじめ検査をすればこうした手間はなくなります。 経験主義がデータに基つく科学主義の前に劣ることを示した代表例です。勿論少量投与、極少量投与も同じです。
 患者さんの中でも、副作用が出ない、少ないと科学的に証明された人にわざわざ少量投与にする必要性はありませんから。

 TS,DPD,MDR1,TP,topo1、P450CYPなどの薬物代謝遺伝子を各個人ごとに解析すれば、幾つかの抗がん剤については、 副作用が出るかどうか判明するでしょう。
 CPT-11以外はまだまだ多くの人に使用できるまでには進歩していませんが、今後数年でこの分野はかなり進歩することでしょう。  そうなれば、経験主義の基の少量漸増、少量投与、極少量投与は姿を消し、がん組織と血液をコンピューターにかければ たちどころに奏効性・副作用が各個人に解る時代が来ると思います。

 しかしこれは現在では実現できないので、医師のさじ加減もまだまだ重要であることは確かです。



 以上まだまだありますが、総論としての副作用が少ない抗がん剤治療には様々のパターンがあることが判ります。  どれも1つの方法であり、全てではありません。
 経験主義を重要視するある老医師の善意はわかりますが、理論的ではありません。 科学的な理論に学ばず、自分はこうした進行がん患者をここまで治したという経験はあくまでも経験であり、 後につながることも、その傍らで治療に成功しなかった患者からも学ぶことができません。
 1つの方法に固執する医師は医療の進歩についていくことができず、一時代前に有名だった医師が現場から離れて 評論家に転進するケースも見られます。

 がん治療が少ない副作用で最大の効果を生むようにする努力はまだまだ続きます。 このサイトも進歩に遅れないよう、よくよく心して精進していく必要があると感じています。

2008年5月2日


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